気持ちの良い風に誘われて、夕方公園へ散歩に出かけた。自分にとって気持ちの良いことは正しいことだと、ミニマリストになって知った。今日は休日で、ずっと家にこもることももちろん出来たのだけど、2階の窓を開けて気持ちの良い風が家中に入ってきたとき、どうしても全身で風を浴びたい、という思いに掻き立てられた。
公園のベンチに座り、深呼吸をする。すると4才くらいの男の子が、走り寄ってきた。
「何をしてるの?」
「風が気持ち良いから公園に来て、休憩してるよ」
親しく話しかけてくる子どもの無邪気さに愛しさが込み上げてくる。
「手に持ってる車のおもちゃ、かっこいいね」
「家にはもっとたくさんあるよ。車ばっかり」
車には平仮名で「あいと」と書いてある。とても良い名前だ。前から友達であるかのように、自然な会話が続き、壁の無い親しみある言葉に癒されている自分に気づく。
「こどもはいるの?」
「いるよ。よくわかったね。小学生の女の子がいるよ」
私が母であることを確認した後、男の子はポケットから何かを取り出した。そしてこういった。
「こどもにあげてね。大きいからのどにつまらせないようにね」
そう言って、走って行ってしまった。
十分に君もこどもなのに。お母さんみたいなことを言うんだね。きっと優しいお母さんに大切にされてるんだろう。
「気持ち良いという感覚に従うといい」
優しい風に全身包まれ、オレンジ色のCANDYを握りしめて家へ向かった。